書籍紹介「科学と人間の不協和音」 池内 了 著
科学と人間の不協和音
池内 了 著 ISBN978-4-04-110111-7
現代は、科学と人間の間の不協和音が大きく響き始めている時代だろう。科学の多くの成果に囲まれ、科学抜きではもはや生きていくことが出来ないことを知りつつ、科学に起因する問題が山積し、科学に追い回されるのは、もう沢山と思う人々が増えているからである。科学は人間を幸せにしないのかもと漠然とした不安感を抱いているのが実情ではないだろうか。
ここに来て、科学の無力さがクローズアップされているような状況が生じている。地球温暖化を始めとする地球環境の危機や依然として続く核戦争の恐怖、抗生物質が効かなくなっていったん押さえ込んだはずの細菌が逆襲を開始し、エイズやSARSなど治療法がわからない新種のウィルスが蔓延するようになった。さらに、遺伝子改変などバイオテクノロジーの発達は、人間の誕生から死に至るまでの膳過程をコントロールすることを可能にし、科学への不安感、不信感、漠然たる恐れ、それらがない交ぜになった気分が高まっているのである。
そして、2011年3月に東日本大震災が勃発した。ここにおいて科学と人間の間の不協和音は最高潮に達した感がある。果たして、これまで通りの科学偏重路線で進むのか、今、重大な岐路にさしかかっていると言えるだろう。
本書では、このような科学と人間の間に生じている不協和音の根源を腑分けしながら、いかにそれを克服していくかを考え、特に科学研究に従事する科学者のあり様と市民との相克を検討することを通じて、科学の実相を明らかにしていくことを目標とする。なぜ、科学が人間を傷つけてしまうのかを科学者として問いつつ、戦争、市場経済、人間の欲望に翻弄される現代科学に転換を迫る。
ポスト原発事故の科学を構想!!
2013年11月7日 9:23 カテゴリー:書籍紹介