書籍紹介 「進化から見た病気“ダーウィン医学”のすすめ」 栃内 新 著
進化から見た病気「ダーウィン医学」のすすめ
栃内 新 著 ISBN978-4-06-257626-0
「ダーウィン医学」は、医師のランドルフ・ネシーと進化生物学者のジョージ・ウィリアムズによって1991年に提唱されました。進化論をもとに病気を中心とした、ヒトの身体に起こる不都合の意味を探り、治療・解決法の手がかりとすることをめざしています。ダーウィン医学が示す、ヒトの自然治癒力を生かすことの必要性や現代の医療が抱える問題点から、新しい「病気とのつきあい方」が見えてきます。従って、ダーウィン医学は、いわゆる医学とは異なり、直接的に治療法を生み出すというよりも、ヒトの病気の意味を進化の視点から解き明かそうとする生物学ともいえます。
病気をこれまでとは違う視点から捉え直すことで、ダーウィン医学は多くの新しい発見をもたらした。我々が病気だと思っている様々な疾病や疾患といった症状のうち(1)あるものは身体を守るための大切な「防御反応」であり、また(2)あるものは人間が作り上げた文明や文化が原因となって引き起こされた「人災」であり、さらに(3)病気をおこすと考えられていた遺伝子が、じつは我々の祖先が生き延びるために有益であったというようなことが、次々と明らかになっています。
このような、ダーウィン医学の考え方を知ることは、病気に関わる可能性のあるすべての人にとって大切である。我々は、病気とのつきあい方のすべてを医師に任せてしまいがちであるが、もしヒトの病気の本質を理解することができるならば患者としても今より自信をもって、自分の身体に対してどのような医療を行うことが適切なのかについて医師と相談できることになるだろう。ダーウィン医学の登場により、それまで医学研究者だけが扱うことが許されていたヒトの病気というテーマが著者のような生物学者にも開放されるようになった。
本書では、できるだけ医学用語を使わずに、ヒトの進化、人間社会の発展、病原体の進化を考えることで病気を理解することを目指しています。
ヒトが病気になるのは進化による必然だった!
2013年9月5日 9:03 カテゴリー:書籍紹介