書籍紹介 「よくわかる、こどもの医学」 金子光延 著
よくわかる、こどもの医学
金子光延 著 ISBN 4-08-720357-3
こどもの診察をしていて以前から感じることがありました。わたしの言っていることが、わたしの思ったように患者さんのご家族に伝わっていないことがある、ということです。診療でやはり一番重要なことは、患者さん側と医療側とで共通した理解があることだと思います。医療側はわかったつもりでいても、患者さん側にその内容についての理解がなければ話は通じません。
本書では小児科医として、親御さんたちに理解していただきたい知識、例えば、こどもの悪い熱の見分け方、悪い咳の見分け方、ひきつけ対処法から、インフルエンザの治し方や予防接種のガイドまで基本的な考え方の解説に重点をおき、日ごろ診察室でお話しているように、できるだけわかりやすい言葉で以下のように語られています。
(1)悪い熱の見分け方
熱だけならあまり心配する必要はなく緊急性もありません。しかし、けいれん、嘔吐、水分摂取不良、ぐったりしているといった症状がある場合は、早めの医療機関受診が必要です。
(2)悪い咳の見分け方
苦しそうでない咳ならば2~3日様子をみてみる。続くようならば小児科を受診する。もちろん悪化傾向があれば早めに。一方、咳のために眠れない、食欲がない、元気がない、咳で吐いてしまうようならば、熱の有無に関係なく小児科受診が必要です。
(3)ひきつけ対処法
まず、できるだけ落ち着いて、こどもを観察できるように少し広いスペースで横向きに寝かせ、首のまわりの衣服をゆるめて、状態を観察する。それでもひきつけが続けば救急車を呼ぶこと。仮にひきつけがとまっても小児科受診は必要です。
これら以外のテーマについてもそれぞれ平易に解説されています。そして、読後はきっとこどもの病気について考えかたが変わります。
2012年10月25日 9:41 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介 「男性不妊症」 石川智基 著
男性不妊症
石川智基 著 ISBN978-4-344-98212-3
不妊症に悩むカップルはおよそ8組に1組ですが、子供ができないイコール不妊といえば、女性側に原因があるという誤解が一般的にあります。不妊関係の著書は多くありますが、そのほとんどは女性側の不妊に対するものです。実際は原因の約半分が男性側にあたるにもかかわらず、男性側因子を度外視して治療されているケースが世界中で後を絶ちません。
男性不妊症の主な原因は、精液に精子のいない「無精子症」、精子の数が少ない「乏精子症」、運動精子が少ない「精子無力症」などの精子異常と勃起不全です。
著者は、精巣でどんなことが行われて、どんなふうに精子が造られているのだろうという純粋な学問的興味と、日常の診療の中で医師としてできることの限界を感じ、患者さんの強い思いに少しでも応えたい、役に立ちたいと、アメリカ、日本、オーストラリアと世界で最も生殖医療の盛んな国々で数多くの基礎研究、臨床研究、そして臨床に従事してきました。
本書には、日本のみならず世界をリードする男性不妊専門医の立場から男性不妊をとりまく日本の現状、また日本で診療しているだけでは知りえなかったこと、世界の常識と日本における常識の相違、最先端の生殖医療に関してできる限り多くの情報が盛り込まれています。また、精子が造られて受精するまで、そして最先端の男性不妊治療で可能なこと、不可能なこと、患者さんに知っていただきたい問題点、医師に対して聞きづらいであろうことなど、外来の限られた時間ではお話尽くせないこともまとめられています。
しかし、本書の最大の狙いは「不妊症は病気であり、そして正しい検査と治療によって子供を持てる可能性が見出せるのだ」ということを一般的に広く知ってもらうことにあります。
2012年10月18日 9:36 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介 「科学でわかる男と女になるしくみ」 麻生一枝 著
科学でわかる男と女になるしくみ
麻生一枝 著 ISBN978-4-7973-6210-7
私たちの社会は、まるで男と女しかいないように動いています。しかし、現実には私たちの思い描く男や女の体にはおさまりきらない体で生まれてくるインターセクシュアルと呼ばれる人たちがいます。体の性は男か女かはっきりしている人のなかにも、それが心の性と一致しない性同一性障害の人たちもいます。また、心と体の性がそろっている人のなかにも、恋愛や性愛の対象として異性に惹かれる異性愛の人たちもいれば、同性に惹かれる同性愛の人たち、そして、男女両方に惹かれる両性愛の人たちもいます。
インターセクシュアルとそうでない人たち、性同一性障害の人とそうでない人たち、そして異性愛と同性愛と両性愛の人たちでは、発達上なにが違うのでしょうか。
また、平均すれば男と女では、行動や様々なものに対する感じ方や考え方、そして得意・不得意などが違います。でも違うからといって、男と女がなんの重なりもない、まったく別の生き物だというわけでもありません。
男と女はどれくらい違っていて、どれくらい似かよっているのでしょうか。そして、男女の違いは、どのようにして生まれるのでしょうか。
本書では、このような様々な疑問に答えています。そうすることで、受精卵から私たち1人ひとりに至る旅路の複雑さ、そしてその複雑さから生まれる現実のヒトの性の幅の広さを本書を通じて実感して欲しいと著者は述べています。
“ヒトの性は性染色体だけでは決まらない”自分が100%男(女)だと言い切れますか?
2012年10月11日 9:53 カテゴリー:書籍紹介