書籍紹介 「ヒトはなぜ病気になるのか」 長谷川真理子
ヒトはなぜ病気になるのか
長谷川真理子
ISBN 978-4-86310-000-8
現代医学はあってはならない状態の「病気」というものを根絶しようと努力し、確かにかなりの成果を上げています。
特に20世紀半ばの抗生物質の発見以来、感染症の克服には目を見張るものがあります。それでも感染症はなくならず、癌、各種生活習慣病、エイズ、そして精神疾患など健康を脅かす悩みの種はいまだに尽きることはありません。
医学は人間の生活に病気があることを当然の現実と受け止め、それを根絶することに精魂を傾けてきましたが、なぜ病気というものが存在するのかという根源的な問いは伝統的な医学にはありませんでした。
病気と健康について進化の観点から考えてみようというのが進化医学、ダーウィン医学と呼ばれる新しい分野ですが、その一端について本書は解説しています。単に病気の話だけでなく、ヒトという生物の生き方、暮らし方全般について進化の観点から考察しています。
具体的には直立二足歩行と進化のテーマでは、直立二足歩行のための構造変化と椎間板ヘルニア、五十肩など、生活習慣病のテーマでは、狩猟生活、農耕の始まりから現代社会、進化における飢餓など、感染症のテーマでは、はしか、おたふく風邪、インフルエンザ、薬の功罪など、妊娠、出産、成長、老化のテーマでは妊娠の成立と維持、閉経と「おばあさん」の不思議などについて考察しています。
2012年2月2日 10:12 カテゴリー:書籍紹介