書籍紹介「食料危機という真っ赤な嘘」池田清彦 著
「食料危機という真っ赤な嘘」
池田清彦 著 ISBN978-4-8284-2573-3
「食料危機」が叫ばれる最大の理由はカロリーベースの「食料自給率」が38%(2022年度)と低いことである。
Ⅰ 日本政府の政策が食料自給率を低下させた
1.G7の食料自給率
(1)維持する必要性
戦争や自然災害という危機に備えて、自国民が飢えないようにするためにそこそこ維持する必要性がある。
(2)具体的な数値(2020年度)
米国115%、カナダ221%、フランス117%、ドイツ84%、イタリア58%、イギリス54%
2.愚かな政策の元凶
(1)1970年から2018年までの48年間の減反政策
食料自給率は、1970年(60%)、1985年(53%)、1990年(48%)、2020年にはついに40%まで落ち込んだ。
(2)減反政策の本当の目的
建前は「農業保護」と「食料自給率アップのため」としていたが、本当の目的は「農業票」を獲得するための選挙対策
(3)減反政策を廃止した理由
農協の集票力にかげりが見えてきたため2018年に減反政策を廃止
(4)本来やるべき政策
国をあげて米の生産を増やし、余剰分は補助金を支給して、海外に輸出や援助するのが、「食料安全保障」の観点からベストな選択。
3.日本特有のさらなる問題
(1)南海トラフ巨大地震
太平洋沿岸の流通は壊滅的な被害を受ける。名古屋、大阪、神戸などの港も機能停止になり、輸入商品もスムーズに入ってこなくなる。
(2)富士山の噴火
火山灰が降り積もり道路も鉄道も使えなくなる。火山灰は自然には溶けないので、これを除去するには時間と手間がかかり、流通はストップする(1ヶ月分の水と米を中心とした食料の備蓄)。
Ⅱ 「タンパク質の自給自足」の方が喫緊の課題
1.海外依存度の高いタンパク質
(1)肉類
牛肉、豚肉、鶏肉のいづれも海外に大きく依存し、さらにエサとなる飼料も殆んど海外頼み。
(2)魚介類
日本の漁獲量は1984年の1282万トンをピークにして、どんどん減り、2020年にはなんと421万トンと3分の1ぐらいに減っている。現在、日本で食べられている魚介類の半分は輸入
2.具体的な解決策
日本の「食料危機」の解決は輸入体制の強化(グローバルサプライチェーンの構築)ではなく、国内の自給自足体制を構築すること。
(1)養殖魚
養殖技術を用いて、国産の魚を増やす。今は海に養魚場をつくったり、川や池に養魚場をつくっているが、それに加えて陸上養殖(大型の水槽)をすること。
(2)培養肉
筋肉の細胞を培養して肉を作る。今は平らな形の培養肉しか作れないが、3Dプリンタによって立体的な培養肉の製造も可能になりつつある。
(3)昆虫食
餌や水などのコストも広大な場所も必要とせず、繁殖力が凄まじいので、本気で養殖すれば必要なタンパク質のみならずミネラルも簡単に摂取できる。
日本の食料自給率100%は夢じゃない!!
2024年8月1日 9:06 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「子どもを壊す食の闇」山田正彦 著
「子どもを壊す食の闇」
山田正彦 著 ISBN978-4-309-63161-5
Ⅰ 農薬大国
1.グリホサート(除草剤に含まれる主成分)…ラウンドアップなど
(1)発がん性があるとして世界49か国で禁止しているにもかかわらず、日本では使用や販売が続けられている。それどころか、グリホサートの残留基準を大幅にゆるめた(2017年:小麦、とうもろこし、そばなど)。
(2)市販されている小麦粉類、パン、及び学校給食のパンを調査した結果、グリホサートが検出された(農民連食品分析センター2018年~2020年)。
2.ネオニコ系農薬(殺虫剤)
(1)全世界でネオニコ系農薬の散布により、ミツバチの大量死で神経系に異常をきたすことが明らかになった。
(2)そこで、EU・韓国(2018年末)、イギリス(2017年末)、米国(2022年)も使用禁止。一方、残留基準値がゆるい日本はいまだに空中散布を続けている。
Ⅱ 食品添加物大国
1.ポストハーベスト
(1)日本では収穫後の農産物に農薬を撒くポストハーベスト農薬は認められていないが輸入する農産物は認めている。
(2)海外からの圧力に負けて日本で許可されている食品添加物の種類はこの20年間で急増し470品目あまりになっています。
2.食品添加物の表示制度の見直し
(1)消費者庁は2022年4月からガイドラインを変更し、「無添加」「◯◯不使用」等の表示は禁止し取り締まることにしました。
(2)ところが、2022年6月22日付けで「無添加の表示はなくなりません」と書いたチラシをウェブサイトにアップしました(消費者の選択する権利・知る権利に敗北)。
Ⅲ ゲノム編集食品
1.ギャバトマト
(1)日本では2021年9月より、ゲノム編集されたギャバという名のトマトがウェブサイトで販売されています。
(2)2018年EUの司法裁判所は、遺伝子組み換え作物と同様に規制すべきという判断を下し、EUではゲノム編集作物は販売されていません。
2.抗生物質が効かなくなる危険性
(1)ゲノム編集した細胞から作られた作物を食べると、抗生物質耐性遺伝子が腸内細菌に移行(遺伝子の水平伝達)し、抗生物質が効かなくなる危険性が生じる。
(2)ゲノム編集するためには、次の3つの物質を細胞核に入れる必要がある。
・標的となる遺伝子を切断するハサミの役割を果たす酵素(Cas9)
・Cas9を標的遺伝子に導くガイドRNAを作る遺伝子
・標的となる遺伝子の切断がうまくいったかどうかを示すマーカー(抗生物質耐性遺伝子)
以上の状況に変化を起こすキーとなるのは、学校給食の無償化・有機化です。現在、すでに約3割の市区町村で無償化は実現しています。
「子どもたちの健康は、社会の未来そのもの。学校給食を起点に日本の食を変える」
2024年7月18日 9:06 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「医者という病」和田秀樹 著
「医者という病」
和田秀樹 著 ISBN978-4-594-09520-8
本書では、いろいろな医学の問題点を著者なりに提起しています。
具体的な問題点は以下の通りです。
第1章 専門医という病
専門外のことを知らないため、総合的に患者の体を診察できる医者がいなくなるという危機的な状況に陥っている。総合診療のきちんとした研修を受けていない医者は開業できなくする、公的な保険の適応外にするなどのシステムを模索すべき。
第2章 大学病院という病
大学病院は「教育」「臨床」「研究」という三つの役割があるため、普通の病院より「臨床」の質は劣ります。上下関係ばかり気にする人たちが多数派を形成し、偉い立場(教授)に立ち、医者をやっています。そして、既存の利権をもち不勉強な教授陣は、プライドがとてつもなく高く「新しい研究」や「自分達に都合の悪い研究」は認めようとはしません。
第3章 薬という病
高齢になると薬の過剰摂取は体に薬が蓄積し体調を崩すため量や飲むサイクルを調整する必要があります。しかし、日本で起こったほとんどの薬害では、製薬会社は訴えられても、内科医は訴えられていません。また、薬を多く使うと医者や病院は製薬会社から、研究費助成などの見返りがあり、大学の医学部は製薬会社に依存しないと研究室の維持ができません。
第4章 検査という病
日本の医療業界は、世界的に見ても「検査」や「検診」が過剰です。その中で、特に問題なのが「正常値主義」です。検査数値を「正常値に戻さないと危ない」という概念を医者が植え付けているため、健康診断で悪い数値が出ると必要以上に怯えて、自ら薬を積極的に飲もうとする患者さんが後を経ちません。本来、医者の役割は、自分の臨床試験を元に、その患者さんの個人差や状態を見極め、適切な「診療」を行うことです。
以上の他に第5章医学部という病、第6章医者という病および第7章医者に騙されず幸福な人生を送るためにが記されています。
患者が知らない"医療界の不都合な真実"
2024年7月4日 9:04 カテゴリー:書籍紹介