書籍紹介「化学物質過敏症とは何か」渡井健太郎 著
「化学物質過敏症とは何か」
渡井健太郎 著 ISBN978-4-08-721321-8
化学物質過敏症をひと言で言いあらわせば、中枢神経が関与する「脳過敏」です。一般的なアレルギー反応(免疫学的反応)とは異なるメカニズムで多種多様な化学物質や環境条件、日用品や薬剤、食物からの微量な刺激にも敏感に反応して、咳、呼吸困難などの呼吸器症状だけでなく、動悸などの循環器症状、めまい、意識が遠のくなどの神経症状、吐き気、腹痛などの消化器症状など、多くの臓器にわたる症状を示す疾患です。その7割程度の患者さんに嗅覚過敏が認められるのが大きな特徴で、「良い香り」とされる香料などにも敏感に反応します。
1.化学物質過敏症と誤診されやすい主な重症アレルギー疾患
(1)重度気管支喘息(様々なタイプの症候群)
合併症がない通常の気管支喘息は、保険が適応される吸入ステロイド薬、内服ステロイド薬さらには注射薬を使用すれば、症状は改善します。一方、化学物質過敏症はいずれのステロイド薬も効きません。従って、ステロイド療法で良くならなければ、化学物質過敏症と考えるべきです。
(2)重度薬剤アレルギー
ある似た構造を持つ特定の系統の薬だけがダメというのが薬剤アレルギーです。一方、この抗菌剤もダメ、この鎮痛剤もダメ、このアレルギー抑制剤もダメという場合は化学物質過敏症の可能性を疑うべきです。
(3)重度食物アレルギー
食物アレルギーは比較的多岐にわたる「花粉食物アレルギー症候群」を含めて、アレルギー反応を示す食材同士は化学的に似たタンパク質を持っています。一方、野菜もダメ、魚も肉もダメ、パンも牛乳もダメというように共通性がないもので症状が出る場合は、まずは化学物質過敏症を疑うべきです。
2.診断
残念ながら、化学物質過敏症の診断法も治療法も、現在のところ客観的かつ化学的に確立されていません。代替法として、世界40カ国以上で診断基準として下記の質問票が使用されています。
(1)QEESI(クイージ)
Q1~Q5の5つのセクションに分かれ、それぞれに10の質問項目があって点数化で評価します。
(2)BREESI(ブリージ)
「QEESI」の50項目にわたる質問に答えるのは負担が大きいため、より簡略化された3つの質問に「はい/いいえ」で回答する質問票で、最近よく利用されています。
3.対策その1…腸内環境を改善する(脳腸相関の応用)
(1)腸内環境を悪くするものを控える
・小麦製品(タンパク質のグルテン)
・牛乳(タンパク質のカゼイン、乳糖、リッキーガット)
・人工甘味料(発がん性、腸内環境の悪化、血糖値の高値安定)
(2)腸内環境を良くするものを取り入れる
・プロバイオティクス、プレバイオティクス、シンバイオティクス
・運動(腸の蠕動運動の促進)
・睡眠を十分にとる(睡眠と腸内細菌叢は相互依存、脳の休息、マグネシウムの経皮摂取)
4.対策その2…日常生活での対策
(1)今は大丈夫な香料でも使用を控える。
(2)浴室の塩素を除去する。
(3)複数の市販薬を使用しない。
(4)歯の治療に使った金属を除去する。
社会に誤解され、医療から無視されがちな"ナゾの病"がよく分かる!!
2025年4月3日 9:08 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「がん「エセ医療」の罠」岩澤倫彦 著
「がん「エセ医療」の罠」
岩澤倫彦 著 ISBN978-4-16-661456-1
現代医療に必須のエビデンスが存在しない自由診療のがん治療。しかし、規制する法律がないために、モラルを欠いた一部の医者が命の瀬戸際に追い詰められたがん患者を相手に荒稼ぎしている。
1.免疫細胞療法
代表格というべき自由診療で、かつては次世代のがん治療と期待され、1990年代から2000年代にかけて大学病院などで数多くの臨床試験が行われました。様々な種類があるが、基本的に患者から採取した血液の免疫細胞を増やしたり、活性化してから体内に戻す治療。結局、臨床試験で有効性が立証できず保険診療として認められていません。そしてがんには効かないというエビデンスだけが残った。
2.免疫細胞療法が効かない主な理由
(1)体内に戻した免疫細胞の寿命は短い
通常の免疫細胞の寿命はは約1週間ですが、培養して体内に戻した免疫細胞の生体内寿命は2~3日程度。しかも、がん細胞と出会った免疫細胞は、活性化誘導細胞死により、24時間以内に死滅する。
(2)培養した免疫細胞は、がん細胞にたどり着く確率が極めて低い
培養した免疫細胞はまず、肺に集まり、12時間から24時間ほど留まる。その後に大動脈を経て、ほとんど肝臓に移行して消滅する。
(3)がん細胞が免疫応答にブレーキをかける
がんを攻撃する免疫細胞の一つ「T細胞」の表面には「PD-1」という分子が存在し、これが、がん細胞が持つ「PD-L1」と結合すると、免疫応答にブレーキがかかる。これを「免疫チェックポイント」と呼びます
3.免疫細胞療法以外の主なエセ医療
話題の光免疫療法(レーザー光でがんをピンポイントで治療する)とは似て非なる「自由診療の光免疫療法」、「高濃度ビタミンC点滴」、「オゾン療法」などのエセ医療が、自由診療として堂々と行われています。これらは、本物のがん専門医なら、絶対に勧めない治療です。
そもそも、医療とは基本的に社会福祉であり、日本の公的保険制度で誰でも公平に最善の治療が受けられます。しかし、前期の自由診療は基本的にエビデンスなき医療であり、莫大な治療費に見合う効果は無きに等しい。
あなたを喰いモノにする「自由診療」免疫療法に騙されるな!!
2025年3月6日 9:04 カテゴリー:書籍紹介
書籍紹介「「頭がいい」とはどういうことか」毛内拡 著
「「頭がいい」とはどういうことか」
毛内拡 著 ISBN-978-4-480-07615-1
「頭がいい」とは、IQや記憶力だけでなく、感覚や運動能力、アートと創造性、他者の気持ちがわかる能力なども含まれます。そのような能力を発揮し続けるための力を、著者は「能の持久力」と名付け、そこに深く関係する脳細胞、アストロサイトに注目します。
Ⅰ ニューロンを守るアストロサイト
1.脳の老廃物を流す
(1)脳表面を流れる脳脊髄液(血漿成分)は脳組織の中に浸透して、脳細胞の隙間に蓄積している老廃物を流しますが、その駆動力を生み出すのがアストロサイトです。
(2)中枢神経では唯一アストロサイトだけが、水の通り道となるタンパク質であるアクアポリン4を有し、水の出し入れを抑制することで、細胞の隙間の体積を調節したり、イオン濃度を制御しています。
(3)隙間の体積は睡眠中に広がり(全体の20%)、よく水が流れ老廃物が洗い流されます。
(4)しかし、老化によりアクアポリン4に変化が起こり、水の流れが悪くなると、アミロイドベータが脳に異常に蓄積すると考えられます。
2.脳を余分な化学物質から守る
(1)アストロサイトはシナプスを取り巻き、例えばシナプス伝達で使用したグルタミン酸を素早く吸収し、グルタミンの形に変換してからニューロンに返します(伝達を中断しててんかん状態を防止)。
(2)「血液脳関門」の血管一本一本にアストロサイトの突起が巻きついて、余計な物質が脳内に侵入しないように取捨選択しています。
3.ニューロンにエネルギーを与える
(1)血管を取り巻いているアストロサイトはグルコースを取り込み、それを、ニューロンが使える形にして与えています。
(2)うつ病などの精神疾患やアルツハイマー病などの神経変性疾患にアストロサイトの機能不全が関与していることも少しずつ判明しています。
Ⅱ アストロサイトの活性化
1.シナプス可塑性に影響を与えるアストロサイト
(1)シナプスの伝達効率は状況に応じて強くなったり、弱くなったりしますが、以下のようにアストロサイトがシナプスに作用して可塑性に関与していることもわかり始めています。
(2)アストロサイトは単に脳内の環境を整えるだけでなく、自ら伝達物質(グリア伝達物質)を放出して、脳の情報伝達に関与しています。
2.いつアストロサイトが活性化するのか
(1)まだ、不明な事は多いが、間違いないのは、生命に危険がない程度の低血糖、低酸素、低血圧などで、脳がピンチに陥っている時。
(2)あるいは思いがけないぐらい楽しいとか高揚感というような強い情動喚起の時に活性化します。
能力を発揮し続けられる人と続けられない人の違いは、「脳の持久力」!!
2025年2月20日 9:01 カテゴリー:書籍紹介